「…遅いな」
シカマルはじわりと掌が汗ばむのを感じた。
もう戻ってもいい頃なのに、隊長の意識が飛んだ状態で数分経つ。
「殺られたんじゃね?」
と、飛段。さっき隊長が移った烏はまだ戻って来ない。飛段を無視してサイは少し旋回しながら降りていくことにした。
「あっ、あれだ、さっきの烏」
烏が大鷲の方に飛んできたが、隊長は微動だにしない。心転身から戻らない。
「…おかしい、普通ならもう戻ってるはずだ」
シカマルは警戒した。影寄せで捕まえようとすると烏は突然ギャアッ、ギャアッと鳴いた。ハッとしたサイが、叫んだ。
「…眼が……!烏の眼を見ちゃいけないッ!!写輪眼だ!」
「写輪…?!……くそっ、イタチか!?」
「見んなって、、お前、見たのかよーッ!!」
「くッ………!ぁぁ!」
「…サイ!!」
サイは、呻き声をあげたが、手探りでホルダーから千本を取り出すと、グサッと太股に刺した。
(……幻術返し、とりあえず上手くいった、)
血が、ドクドクと流れたが、サイは焦らず医療パックから止血剤を出した。シカマルは手早く止血を手伝った。
暁の二人はどこにいるのか、まだ確認はできない。攻撃は止んだから、退いたかまだ次の手を画策しているのかもしれない。
頭の上をまだ飛び回っている烏を見ないようにしながら、しかしシカマルはそれに影縫いを発動するのをためらっていた。
(隊長がまだあの烏の中に居る……しかし、写輪眼がなぜ烏に…?)
その時、背後からクナイと千本が烏に投げられるのを、シカマルは見た。
次頁=*頁(血)
87
[prev] [next]
top