夜明けが近づいた頃、視界が開けた。海だ。そして霞んだ先には空港が見える。

飛段はどこから逃げる気なのだろうか。
海か、それとも空からか。
バックミラー越しに見ると鹿丸の服に着替えた飛段が角都の寝顔をじっと見ている。
その顔が無表情にも、憂いを帯びているようにも見える。
この二人はいつから一緒にいるのだろう。
俺の住む世界とは、違う世界で。
そんなことを思っていると、飛段が鹿丸の視線に気づいた。

「…お前の服キツすぎ…」

急に不遜な態度をとる飛段に、変装は常識だろ?と鹿丸は笑った。

「…まあな。イタい格好だけどな。」

飛段がそういうので

「俺もそう思う。」

と鹿丸が言うと、飛段はイラッとした顔でミラーの中の鹿丸に中指を突き立てた。

「貰った服だから仕方ねえだろ」

鹿丸も中指を立てて応戦した。

それから二人はまた静かになった。
角都という人はまだ、眠っている。

コンビニで買った朝食を食べ終わると、飛段は角都を後部座席に体を伸ばして寝せた。
そして鹿丸に聞いた。

「…前行っていいか?」


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