車はライトを消したまま、生い茂る竹林の中を伏せるようにして進み、庭と道路の境で一気に加速した。
玄関の奴等に気づかれただろうか?親父は、無事だろうか?

「どこ行きゃいいんだ!?」
スピードを上げながら鹿丸が怒鳴ると、飛段は、

「このまま県境…ひたすらこの川沿いを海目指して走るだけでいい!」と怒鳴った。

チラ、と飛段を見ると、上半身裸で、下はバスタオルで隠しおおせているのか、ここからではどうなっているか分からない。車でそんな格好は怪しいし、第一、飛段の白い肌は暗闇で逆に人目を引きかねない。

「…貴様早く紙袋の服に着替えろよ!いつまでそのまんまで居るんだよ!!」バックミラーに映る飛段を見て鹿丸は叫んだ。

「…わーった!分かったから怒鳴るな!角都が起きる!!
…つーか、お前の服!?」

「…お前のも入ってるけど、それやる!やるからとっとと着ろ!んで、黙ってろ!」

「…こんな下着着てんのかよ…鹿丸先輩!」

「…客に貰ったんだっ……一度も履いてねえ!!」

鹿丸は叫んで、ハンドルを切った。


ひたすらひたすら川沿いを海へ、飛ばすしかない。

家に来たのは警察か、飛段たちの敵か、どっちかだろう。だが、警察に鹿狗が落ち着けよ、などど言うだろうか。何から逃げているのか、鹿丸も飛段も解らなかったが、とにかく、誰にも捕まる訳にはいかないのは確かだった。

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