鹿丸は、これ以上見とれても、何もいいことはないし、またからかわれるのがオチだと分かっていたから、その笑顔を人知れず脳裏に焼き付けながら、飛段にシャワーでも浴びてくれば、と水を向けた。
確かに、薄汚れている。シャワーなら傷口を避けて浴びるくらい出来るかもしれない。飛段は鹿丸に、覗いてもいいけど覗くなよ!と釘を刺して風呂場に入った。
(…覗くかよ!)
鹿丸が思った時、玄関でドカッという音がし、いつもは鳴らないベルが二度鳴った。
鹿丸はハッとした。
数分前。
鹿狗は、往診が終わって帰る道すがら、携帯を確認した。別段何かメールがきている訳ではない。あの不気味な待受を眺めて癒されただけだった。
ふと、ストラップの指環に目が行く。
(不思議な縁だな…。)
鹿丸とあいつの相方が同じ店で働いていたとは。
鹿丸はどうもあの銀髪の兄ちゃんのファン…?のようだし。
(もう、風呂入って寝ちまった頃か…。)
玄関の鍵を開けようとしたその時、玄関脇から飛び出してきた数人に羽交い締めにされ、鹿狗は玄関の扉に叩きつけられた。
咄嗟にポケットに手を入れ、ボタンを押す。
(気付け!鹿丸!)
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