「…親父さんは往診だとよ。しかし、雑炊が旨いと思ったのは初めてだぜ。」

飛段と鹿丸は向かい合って夕飯を食べた。

「…クッパとか雑炊とか、親父得意なんだよ。相方の分、残しとけよ。」

「…ん。 まだ寝てたからな。」

飛段は鹿丸を見た。さっき寝ぼけて手を握りしめていた男は、何も覚えてなさそうに夕飯を食べている。飛段は少しからかいたくなった。

「…ヘリに乗ったんだって?」

「…親父に聞いたのか…
お前が病院から拉致されたって聞いて…警察に協力しただけだ。誰かさんがなかなかうまく立ち回って、煙に巻かれたけどな。」

「……そりゃ悪かったな。」飛段は肩をすくめて笑った。

鹿丸はコーヒーを淹れながら同じく肩をすくめた。

「……もうあんたのことは詮索しねえよ。」

「ふーん。」飛段はコーヒーを受け取って笑う。
「それは無理かもな。」

「…どうしてだ?」

「…お前、俺の手握って、寝言で俺の名前連呼してたから。」

鹿丸はコーヒーを吹き出した。「…嘘だッ!」

(俺が、飛段の、手を!?そして連呼?!)

その顔がなんとも情けなくておかしくて、飛段は笑った。

「離してくんねーの!…心配かけてたみてーで、すんません、鹿丸さん!」

(離さなかった??!手を?………は、恥ずかしい……)

もう、飛段にそんな風に言われると、
「いや、……夢ってのは…あの、不可抗力だから…俺の責任の範疇じゃねえんだよ!」と、言うのが精一杯だった。

飛段は笑って、「…それはちょっとホストらしくない返しだな。」と言った。鹿丸は、悪かったな!と言ったが、ハッとして、
「……お前……ホストは…?」と聞いた。

「…戻れる訳ねえだろう。俺の罪状いくつあると思ってんだよ。」
「……え?知らないけど…そんなにあるのかよ…」

「正式には数えてねえけど、容疑はたくさんかかってる筈だ。」

「じゃあ、過去を清算しに行くのかよ。」

「…さあ、どうだか?」飛段は笑った。

鹿丸はまた飛段に見とれてしまい、夢で彼の名を連呼する訳が分かったような気がした。



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