目覚めると見慣れない部屋だった。
明け方なのだろうか。それとも夕暮れなのだろうか。
薄暗く、外の様子が知れない。
体のあちこちの傷は、痛み止めが効いているのか、打撲によるダメージもそこまで感じない。胸や頭の傷口は、触れてみると縫ってあるようだ。
飛段に、携帯からあの医者のホームページにメールさせておいて正解だった。
至急診察希望、とメールをくれれば、これから先いつでも万全の準備をしておく、と一度目の時鹿狗に言われていた。仕事に徹する姿勢が気に入ったのだが、また助けられることになるとは。飛段も、あの医者に名前を書かなくていいと言われただろうか。
(…さすがに飛段がホテルで撃たれた時はターゲット処理が最優先だったからな。連れてきてやれなかったが。)
ふと見ると、飛段の上着が畳まれて枕元に置いてある。飛段は別室にいるのだろうか。
角都は座敷に降りようとしたが、目眩がするので諦めた。
動くのは無理があるようだ。角都はまたベッドに横たわり、そのうち寝てしまった。
飛段はトイレに起きたが、今の時間が何時なのか家の中が暗すぎて分からなかった。
柔らかい何かを踏んづけて、暗い廊下に出る。小さな灯りが足元に点いている所がトイレだろう。
用を足して戻ってくると、角都の部屋を覗いた。寝息が聞こえる。飛段は角都の枕元に立ち、じっと寝顔を見つめた。
(…無事で良かったな…)
飛段は角都の額にゆっくりキスして、しばらく頬ずりしていたが、角都の眠りを妨げないように静かに部屋に戻った。
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