「……と言いたい所だが、」と鹿狗は手術用ゴーグルを外しながら言った。

「…申し訳ない、人手が無いんでな、こいつを運び出してくれるか?別のベッドを持ってくるからそれに横になってくれ。」

鹿丸と飛段は、角都を寝せた手術台兼ベッドを、一旦隣の間に移す為に一緒に運んだ。

暗い座敷に静かに運び込むと、飛段は立ち去り難い様子で、角都の心臓に耳を当てた。角都の落ち着いた心音が聞こえる。

「…大丈夫だ、」鹿丸は元気づけるように言い、先に鹿狗のもとに戻った。ベッドをセッティングすると、飛段を呼びに座敷へ行った。

飛段はまだそのままの姿勢でいて、無表情で鹿丸を見た。

一人で無茶して助けに行ったのだ、そんな状態にもなるだろう。


「あそこに横になれよ。お前もボロボロだろ。」

飛段はおもむろに立ち上がった。

「……命懸けた甲斐があって、良かったな。」

「…ここに辿り着け、と角都が言ったんだ。」襖を閉めながら、飛段が言った。

「…まさかお前の親父だとはな。」

「……その人が俺ら一家の恩人なんだって、親父に聞かされた。
だから助ける。」

ぐちゃぐちゃ言ってねえで早く来い、腹を縫わなきゃならねえ!と鹿狗が低く叫んでいる。恩を着せるのが嫌いなのだ。

手術台に飛段が横たわると、鹿狗は麻酔を打った。



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