夜中の3時過ぎに家の近くまで送られた鹿丸は、馴染みのないヘリの爆音に長時間さらされたせいか、かなり疲れていた。
おまけに安否を気遣う時間も長すぎた。

今頃飛段はどこをどう逃げているのだろうか。

「…ただいま。」

真っ暗な玄関の戸を開けると、二重の隠し戸が閉められていた。

(…まさか…。)

鹿丸の心臓はズキンと跳ね上がった。

急いで隠し戸を開けて入り、すばやく鍵を掛けると鹿丸は上がり框を上がった。
いつも以上に家は真っ暗だった。窓という窓の、雨戸や鎧戸が、閉められている。常夜灯だけはいつも通り付いている。

この隠し戸が閉められている時は用心のいる時であり、親父が公言できない手術をしている時だと、鹿丸は物心ついた時には気づいていた。



突き当たりの施術室から微かな明かりが漏れている。


鹿丸の心臓はドクドクと整わない脈を打ち始めた。


タイミングが良すぎないか!!?

あいつだったら!

あいつと角都だったら!

その時、施術室の戸が開いた。



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