鹿丸がまだ、飛段の無事を知らずに悶々と仮眠していた頃、飛段たちはようやく地下水路跡を進み、地上への鉄梯子を登る所まで来ていた。

角都の顔色が悪い。じっと寝ているほうがまだマシなのに、おぶわれて圧迫されているのもキツいのだろう。一旦角都を下に降ろして飛段は「…大丈夫か?」と聞いた。

角都は大きく息をして、吐血した。

「角都ッ!」飛段は声を殺して叫んだ。角都が何か言っている。
飛段は耳を近づけ、頷くと自分の胸ポケットから携帯を出し、電源を入れると手短かに用を済ませた。


その時、アジトの方角から銃声が一発響き渡った。騒ぎが風に乗って聞こえてくる。飛段はチッと舌打ちをした。角都が居なくなったことに、奴等が気づいたのだろう。
飛段は携帯をオフにした。

角都は飛段の腕を掴んで「…歩けないことはない。」と言い、立ち上がろうとした。

飛段はそれを制止して言った。
「……馬鹿言うなよ角都。
今日は俺の言うことを聞いてくれ。」
角都の重い体を背負った飛段は言った。

「ここを登ったら山に入る道がある。その奥に、バイクを停めてあるから、そこまで全力で行く。いいか。」

――何としてもたどり着かなけりゃお前は…――

飛段は鉄梯子を一歩ずつ上がった。


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