一方、鹿丸はというと…。
飛段の姿が見当たらないのでとうとう彼を捜すのをあきらめた。


(…よっぽど急ぎの用だったみてぇだな…。

ま、何も連絡ないし、夕方まで店で預かってもらってもいいか…)


疲れてはいたが寒風の中で動き回ったせいで、酔いが醒め、頭がスッキリしていた。
(飛段様サマだな)

鹿丸は店に戻り、携帯を預けてから、今度は本当に家に帰った。




その夕方。


同伴の客と宝飾店に入っていた鹿丸は、繁華街が見えるウィンドウから何気なく通りを見ていた。

仕事帰りなのか先を急ぐ人の群れ―――。
寄り添う恋人らしき人たち――。
雑踏のうねりに運ばれて
それぞれの夜が今日も始まってゆくのだろう。


そんな中、くわえ煙草の黒いコートの銀髪の男が、ポケットに手を突っ込んで歩いているのが見えた。

飛段である。



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