角都は足元の男を見た。目深に被った黒いフードは、さっきリンチの場で傍観していた男が着ていた気がする。

「…こんなに…やりやがって…」物凄くトーンの低い声だ。

角都はハッとした。本気で怒るとそんな表情のない声になる奴を一人知っている。

その立ち姿で紛れもなく自分の相方だと分かる。


「飛段…」

「…今外してやる…」


足枷を外す指が怒りで震える。気を張っていた角都が目を閉じ、少しだけ安堵した顔を見せた。

飛段は角都をゆっくり立たせた。その腕を肩に回してしっかり支え、歩き出す。角都の傷ついた体が、ひどく重い。どこもかしこも殴られた痕があり、傷跡からは新しく血が流れてくる。

(…寄ってたかって酷いことしやがる。)怒りが収まることは決してないが、今は逃げる方が先決だ。

地下牢から続く水路を通って地上に出ることにしたが、角都はまともに歩けない。

飛段は歯を食いしばって角都をおぶった。


「…飛段…俺は……」

「…駄目だ、喋んな、角都、」角都の言葉を遮って飛段は言った。

早く、奴らが食事から戻ってくるまでに角都を外へ連れ出さなければ。

一刻も猶予はない。



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