冷たい水をかけられ、朦朧とした頭をようやく持ち上げると、己の血染めの水が足元を流れていくのが見えた。
どのくらい時間がたったのだろう。日射しからして、もう夕方に近いのか。
顎にくらった一撃が効いたらしく、角都は気絶していたようだった。激痛に体が軋んでいる。息をするのも辛い。

「…明日、こいつが死んでたら話にならねえな。」

「…え!こいつが生きてなかったら、金入らねえのかよ。」

「…馬鹿、当たり前だろう…!
こいつが虫の息だとしても、飛段とかいう奴は必ず来るだろうよ。あいつだって犯罪者だ、警察に言う訳ねえ。言わずに大金持ってくる。」

「こいつを囮に、もう一人も捕獲できるってことだな!死ぬまでいたぶってやればいいさ。」

「…まあ、今は死なせちゃまずい。リンチは休止だ。」

「…誰か、こいつ下ろすの手伝ってくれ。」

吊るされた鎖が緩められ、角都の痺れて動かない腕が、解かれていく。数人で角都を抱え、簡易ベッドの上に横たえる。一服した男もそれを手伝った。

夕飯時らしい。食事とは思えない粗末なものを角都のテーブルの上に残し、アジトの男たちはぞろぞろと1階に移動した。その時、一人の下っ端に誰かが、足枷忘れずつけろよ、と指示する声がした。

(やはり、な。卑劣な奴等だ、ぬかりはない。)

角都は天井を見ながら、逃亡防止の足枷をはめられる感覚を覚えた。やはり今日も逃げられない。きつく目を閉じると、飛段の顔が浮かぶ。

(明日、本当に飛段が来てしまったら、どうする。
俺はお前の囮だ。ホテルで撃たれた時は非情にも置いてきたが、こいつらの計画を知って、お前が撃たれたのは良かったのかもしれないとさえ思ったのに。)

やけにゆっくり、足枷をはめる男だな、角都がそう思った時、

「……迎えに来たぜ。」

その男は、静かな声で言った。



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