(飛段が、死んだ? まさか。
病院から出ていった飛段と連れが、車の事故で死んだってことなのか?)

鹿丸は気持ちを落ち着けるのに必死だった。

(…あいつが事故で死ぬ玉だとは思えねえ。
だって、あいつは…あんとき俺を殺す勢いだったんだぞ…!
絶対角都って奴を助ける為には手段を選ばねえ感じだった。
それなのにたどり着く前に死ぬなんて…ありえねえだろ……)


刑事はまだ身元が分からないので、と言い、部下に、自分たちはガイシャとかマル体とか、いろいろ物のように情報を交換するのに慣れすぎているが、やはり動揺させる情報はあまり部外者に知らせるべきでないな、と耳打ちした。

コーヒーを勧められたが、飲む気がしない。時間が、ゆっくり過ぎている気がする。こうしている間にも囚われた男が危険に晒されているかもしれない。

(俺はあの日飛段が恐ろしかった。
俺の知っている愛想のいいおバカな飛段が、あまりにも変わってしまったから。
でも、あれも飛段だったんだ。俺の知らない飛段。

次に会った時は、人をからかいやがって、でも少しバカに戻ってた。あの瞳とか、髪とか、色々…、眩しかった……

そうだ。あいつのこと、眩しかったんだ俺。

……死んだのが本当に飛段だったら?

そんなのは嫌だ。俺はお前が居なくなるのは嫌だ。

よく分からないけど、嫌だ。

こんなことならあの時、殴られても半殺しの目に遭っても、警察に知らさせるんだった。
お前が死んだら、俺は一生後悔してしまう。

どうか、死んだのが飛段でありませんように。)

手がぎゅっと祈りのポーズになる。この際なんでもいい、縋れるものに縋るしかない。


追って連絡が来て、刑事は、パソコンで何かをやりつつ携帯で話していたが、鹿丸はもう、途切れ途切れの会話すら耳に入ってこなかった。



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