「…朝か、…」飛段は顔に当たる朝日に、うっすらと目を開けた。

昨晩、車を捨ててから血のついた服のまま、歩き続けてたどり着いたのが、修理工場だった。開いていたガレージからしのび込むと、どうやらバイクの修理を依頼する客が、手続きしているようだ。ぶつけて、ミラーが割れたと言う声が聞こえる。
飛段が息を殺していると、客は帰っていった。
運び込まれたバイク――1000ccくらいだろうか――わりとでかい車体には、まだキーが付いている。店の主は奥に行って席を外している。

足下に修理用のスパナが転がっているのを拾い上げ、飛段はバイクに走り寄り、跨がるとキーを捻った。

爆音がしてバイクが走り出す。
店主が喚いているのはすぐに風にかき消された。
ノーヘルでバイクに乗っているのに気づいたのは、随分走ってからだった。
角都の囚われている場所に向かうのに、足があるだけラッキーだ。脅迫状は肌身離さず持っているし、地図にあった場所はこの付近のはずだ。
アジトを一望できるあたりまで、山道をひた走り、夜中になってなるべく見通しのきかない所にバイクを停めた。
ここにきて、腹の傷がまだ癒えてないのがかなり堪えた。
バイクに寄りかかると、飛段は目を閉じたのだった。


それが、つい何時間か前。そして朝がきた。
あまり寝た気がしない。
けれど期日はもう、明日だ。金は無い。
警察に話した所で、逆に過去を暴かれれば動けなくなる。
アウトローはアウトローなりのやり方で突っ込んで行くしかないのだ。


飛段は、アジトに潜入する算段に取りかかった。

(…角都、待ってろよ。弾は用意してきた。

金は…ねえんだ。だから、俺があんたをさらっていく。

必ず、突破してみせる。)


[*prev] [next#]

[page select]100





top










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -