見張りの男がギギ、と錆び付いた音を立て関貫を外した。

床からほんの少し浮いた状態で吊るされた角都は、鉄格子の向こうに人影を感じ、警戒した。

古い頑丈な建物は、この国の戦争の遺物だろう、廃墟となり今は無法者たちのアジトになっている。吹き抜けの明かり取りの窓から差し込む朝日が、吹き飛んだ1階部分を通過し、地下牢にまで差し込む。

記憶では、ここに来てからもう1週間は経つ。
やつらは金も飛段も狙っているのだから、期日に飛段が来るまでは絶対、俺を殺さないだろう。

ただし、飛段が来た瞬間、どうなるか分からない。
金だけ受け取って、二人を無事返してくれるなど、あり得ない。力と卑劣さだけの奴等だ。

鎖で吊るされた角都の両手は血が下がって、浅黒い背中には打撲傷が無数にある。
胸にはナイフで切られ指環で抉られた跡が生々しく残っている。床の血溜まりは乾いているが、またすぐに血で濡れることになるのだろう。

ここのボスは昔獲物を取り合ったことがあり、一方的に恨みを抱いている男だった。初日から容赦なく殴られた。

今日はまたリンチの人数が増えているのか、円形の広い牢屋の真ん中に、上から吊るされた形の角都を複数の足音が囲む。
緩んだ目隠しから見える範囲では、何人かは分からない。下卑た笑い声がする。

「あいつが来るまで生きてろよ。俺たちは加減できねえからお前が耐えろ。

お前が死んだらあいつがどうなるか分かんだろ。」

ボスらしい男は角都の耳許にささやいた。

「ここで輪姦されるだけだぜ。死ぬまでな。」

そういう卑劣な言い方をするのを角都が好まないのを知っていてやっている。挑発しているのだ。
まあ、死なれたらもともこもねえけどな、と憎たらしく笑っている面を見て殺気が沸いた。

(殴られても蹴られても切り刻まれても、お前らに屈してたまるか。)

目隠しをキツく縛られ、角都は歯を食いしばった。

一発目がくる。
脇腹を蹴りあげられたが、角都は声を上げなかった。
宙に浮いた体はすぐに重力に従い、鎖はガチャガチャ音を立てた。
殴られ、蹴られする中、回し蹴りが喉元にヒットした。
思わず「…ァッ!」と声にならない声が漏れた。目眩がする。息が出来ない。

いい声してんじゃねえか、と調子に乗るボスに、周りも調子づき、角都がいいようにやられる様を笑って見ている。
眉根を寄せ、暴力に耐えているその顔を、もっと歪ませ、もっと絶望の声をあげさせたい。ひれ伏すまで。



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