今夜の店はなんとか乗り切れた。鹿丸は今日も実家に向かいながら、飛段のことを考えていた。

あの後、飛段は一旦家に帰ると言っていた。

俺は角都のことがあるからな、と大義名分とやらを振りかざし、
鹿丸サン、お店、よろしく――!とおどけて言って、鹿丸はものすごく癇に障った。
本当に角都という奴を助けたいなら、初動で既に遅れをとっている気がするのだが。

飛段には一計あるらしく、鹿丸はマンション前で別れて、店に行ったのだった。


遅くに帰ると鹿狗が、おっ、今日も泊まりかよ、と言って、飯は?と聞いた。
鹿丸が茶漬けとかなら食えるかも、と言うと、よし、今からクッパ作ってやる、待ってろ、と台所に行った。

いいよ、自分でやるよ、と言って、居間に座ると、親父の携帯が置いてある。そして、あのストラップ。いろんな物に判断を迫られているような気がする。


鹿丸が鹿狗の携帯の待受画面を何気なく見て絶句した時、
「…みたのかよ…」と鹿狗に言われ、「み、見てねえよ!!」と鹿丸は叫んだ。

「…聞いてみたのかよって言ってんだよ、」と、鹿狗が背中で聞いた。台所からいい匂いがする。

「…ん?…あ!ああ…!」

「…なら、決まりだな。」

「…決まりだなって……。」

目の前に湯気の立った丼が置かれた。

「…ま、食えよ。」

頂きます、と手を合わせて箸を取り、一口食べるとなかなか旨かった。

「…旨い!」というと鹿狗はそうだろ、と満足気だ。一杯を平らげた息子に鹿狗は言った。


「…ま、気を付けてな。お前は銃ぶっ放したり出来ねえんだからな。

勝負は、ココでして来い。」鹿狗は頭を指差した。


鹿狗は、わが父ながらまあ渋い男だと思う。が、鹿丸は思った。

(忠告ありがとう、親父。あんたのやることにはちゃんと筋が通ってる。
脅迫者に挑ませるのはどうかと…思うけど、
筋は間違ってねえ。それは分かったよ。

だけどあれは…あの待受画面は、イケてねえんじゃねえかな。

前は、鹿の群像の壁紙だったけど、今度はせ○とくんかよ!

悪趣味極まりねえぜ!

かっけえのに、惜しい…!惜しいぜ親父!)

鹿丸はご馳走さまをして、丼を片付けた。


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