鹿丸は予想外の展開にどぎまぎした。

「…!!…い、いや。ちょっ、離せ、飛段……!!」

鹿丸がもがけばもがくほど、飛段は面白がって鹿丸の視界を遮った。身長は飛段の方が高いのだから、敵わない。

段々、鹿丸は腹が立ってきた。
本音をぶちまけないと気がすまなくなってきた。


「俺はっ………!…クッソッ…!
誰がてめえの客の相手して睡眠不足になってると思ってんだ!

昨日は昨日でスタンドで殴り殺そうとしたくせに!(めちゃめちゃ怖かったんだぞ!)
そんなこと良く言う……離せ!お前なんか……許さねえ!
……何が、鹿丸だ!鹿丸センパイとか嫌味言いやがって!
…ほんと信じられねえ…!(前は鹿丸さんて言ってたくせに!)

何が俺のこと好きだ、……バカ!この自惚れ屋!
もういい、俺は降りる!!この、……バカ飛段が!!」

一気にまくし立て、奴に体当たりして壁から逃れた。

久しぶりに、清々した。

と、体制を立て直した飛段が、フン、と髪をかき上げ、不敵な顔で鹿丸を見て言った。

「…角都だぜ。」

鹿丸が、ん?と訝しむと飛段はもう一度言った。

「…俺の相方は、角都だぜ。」

そして、夕日に向かって思い切り伸びをした。


「…こんなコンビ、いねえよって言うくらい息の合った奴でさ。
アイツが居なきゃ今の俺は無い。

なんとしても取り戻す。絶対に。」

振り向いた飛段の顔は、とても潔くて、そして綺麗だった。


――そんな風に話すんだな、角都って人のこと。


鹿丸は自分がからかわれただけだったのだ、と思い知った。

もう店に行く時間だった。夕闇は徐々に濃くなっていった。



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