全力で走って2本目の筋を入るとすぐに、鹿丸は飛段の手を引っ張って、雑多な路地の一区画にある物置の陰に潜んだ。
ここは上からも、道からも見えにくい。
飛段の息が上がっている。やはりまだ完全に回復していないのだ。
付けてきた奴等の怒号がまだ聞こえる。
さっきは無我夢中だったが、こうして二人で息を潜めていると変な感じだった。喋る必要がないのがありがたいくらいだ。
二人ともこの昼間から暗い路地で、座って壁に背を付け、向かいのビルに西日が当たっているのを見ていた。
しばらくしてすっかりこの界隈の音の中に、奴等の声も気配もしなくなった。
うまく巻いたらしい。
先に立ち上がった鹿丸は、飛段に大丈夫、立てよ、という手振りをした。
飛段は、なんとなくバツが悪そうに背中の埃を払いながら立ち上がった。
「…一つだけ聞きたいことがある。いいか?」
鹿丸は飛段のほうを見ずに、夕暮れに染まる路地を見ながら言った。
飛段は、もういいから、という風に首を振った。
構わずに続けた。
「…カクズ…」
飛段の目が見開かれる。
「……お前の相方って…角都って名前か?」
「…なんで……!」飛段は絶句した。
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