(…チィ…来たか。)

飛段は付けられているのに気づいていた。

ーーどう巻けば…路地裏を行くしかないか。

その時、その緊張感とは異なる、空気を読まない声が聞こえてきた。走ってきているらしく、どんどん声が近づいてくる。

「……こ、この野郎ー!こないだはよくも!」

どこかのバカが絡んできた。殴りかかってきた拳を避けると、もう片方の手が首に回る。長い黒髪が顔に当たって痛い。


そのバカを睨むと、鹿丸だった。

「付けられてる!」

「わーってる!!」

二人の目が火花を散らしたが、すぐに分かりにくい路地を目配せした。

「話は、巻いてからだ!」

二人は迷路のような路地を走り出した。

ここは、俺たちの庭だ。絶対、振り切ってみせる。



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