「…脅迫とは卑怯だな。」鹿狗は鹿丸を見た。

「…誰かの命や、大切な物をかければ、金も人も思い通りになると勘違いしてる奴等だ。

鹿丸。俺の恩人は、犯罪者だが、姑息な手は使わない奴だった。
言い方は悪いが、殺るなら堂々と殺る。

これだけいろんな人間を診てきてる俺が言うんだ、
そいつが脅迫するなんてありえねえ。」

鹿狗はコーヒーを煽った。

(……大学病院で長続きしねえ理由が分かったぜ、親父。
持論も視点もヤバすぎて、あそこには収まりきれねえ。)


「直感だけで判断は出来ねえか。

…じゃあ、脅迫されてる奴に、誰の命がかかってんのか、聞きゃいいじゃねえか。そいつ、今相当テンパッてんぞ。」
鹿狗は言った。

鹿丸はまた飛段を、恐怖の瞬間を思い出した。
頭を振ってその映像を追いやる。



(…つーか、親父も名を知らねえのに、情報をすり合わせるなんて不可能だ。

それに、関わらねえと決めたじゃねえか。)

「…ギブだ。眠ぃ。

…親父、今日泊まるぜ。

明日、俺は遅いから起こさなくていい。」

鹿丸はコーヒーを飲み干すと、自分の部屋だった和室に向かった。



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