「…また俺のストラップにケチつけたそうな顔だな、おい。
…まあいい。」鹿狗はコーヒーを一口飲んだ。


「これは、俺の恩人が名を名乗る代わりにくれたんだ。

お前も覚えてるだろ、俺を狙った奴を上手いこと始末してくれた。
一家全員命拾いしたんだ。」


「…親父を狙った奴が裏社会の高額の賞金首で、
そいつを賞金稼ぎが狩っただけのことだろ。」

「…それでも俺は命拾いした。お前の恩人でもある。」

「…ふーん」

鹿丸は指環を触ってみた。見た目より重い。


「…つーか、名乗らなかったって、そいつが犯罪者だからなんだろ。」鹿丸が言うと、

まあ、俺もぎりぎり同類だぜ、というのだが、鹿丸はキッパリ言った。

「…親父は人を生かすじゃねえか。犯罪者ってのは人を殺すんだぜ。」

簡単に、殺そうとすんだぜ。

脳裏に昼間の飛段が浮かぶ。正直、キツい。


興ざめした鹿丸は指環を鹿狗に返した。

「…いいのか?この指環がどうしたんだ?」


「…ん。

指環に書いてある字が、印鑑のように封筒に押されていたのを見たんだ。」

「特殊な印だから、アイツのかも知れないな。

ただ、本人が送ったか、偽装かは分からんな。」と鹿狗。


鹿丸は言おうか言うまいか迷った挙げ句、

「…脅迫状だったぜ。」と、言った。





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