「お疲れ、飛段」
「あ、わりぃ、鹿丸さんお疲れ様」
飛段は慌てて携帯から鏡の鹿丸に視線を移して挨拶した。
一応飛段は鹿丸を立てて、No.2らしく振る舞うのだが、鹿丸は不思議と格の差はあっても、一緒に働いていて気を遣わなくて済むこの男に一目置いていた。
しかし鹿丸は鏡に写る帰り支度中の飛段をじっと目で追っていた。
何故だろう。
いつもの饒舌な彼ではないように見えるのは。
「すいません急用が入っちゃって…鹿丸さんお先にお疲れっす!」
いつの間にか支度をした飛段は革のコートを羽織り、会釈をして控室を出ていった。
(急用か…。
アフターって時間でもないし客じゃねえんだろうけど。
…あ…。)
控室の花器の台の上に、飛段のものらしき携帯が置いてある。
うっかり忘れたらしい。
鹿丸は携帯とコートを掴んで
控室を飛び出した。
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