どこで、見たのだろう。
あの印の字。鮮明な記憶ではない。だが、覚えている。
「…ッ…」
鹿丸の脳裏の記憶を、飛段の声が現実に引き戻した。
そうだ、飛段に怪我はないのか?
「……ひ、飛段、大丈夫か!!」
「……ッ…痛」
鹿丸が慌てて立ち上がると、飛段はベッドにうずくまっていた。
腹部のガーゼが赤く染まっている。
「飛段!!」
飛段の目が苦しそうに鹿丸を見た。
肩をさすり、声をかけたが、飛段はギュッと目を閉じ、浅く短い息をしている。
「…飛段!」
飛段の手が鹿丸の手に伸びてきて、手紙と封筒を引っ張った。
「…俺の……」
鹿丸はナースコールを押し、至急来てくれ、と叫んでいるが、繋がらない。
「…返せ……」鹿丸は聞こえないのか、ナースを呼びに行こうとした。
「…鹿……丸…!…」
ドスの効いた声に鹿丸はビクッとして立ち止まった。
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