「245号室の飛段さんですね、面会できますよ。どうぞ行かれて下さい。」
意気込んで病院に駆け込んだ鹿丸は、受付の事務員にそう言われ、拍子抜けした。と同時に、勢いだけで来たものだから自分の張り切り様が少し恥ずかしくなった。
面会カードを首から下げ、2階の端の部屋を目指す。
後ろから着けてきた男になど、気づきもしなかった。
鹿丸は部屋のドアをノックしたが返事がない。
仕方なく、「飛段、入るぜ、鹿丸だ。」と言い、ドアを開けた。
…もう、だいぶいいのか?と言おうとして、飛段がベッドに座って虚ろにこちらを見ているのに気づいた。
閉めたドアに背中がぶつかる。
点滴や、呼吸を補助するものなのか、管がいくつか腕や体にくっついている。痛々しい。心臓がずきずきした。
「…鹿丸さん………、あ、パジャマありがとうございました」
飛段は礼を言った。
「いいんだ、使ってくれよ…って、下しか着てねーじゃねえか!」
笑わせようとしてなんとなく空振りに終わったのは、飛段があまり元気でなさそうで、自分も少し管風情にビビったからだった。普段とは違うのは当たり前だ、と鹿丸は思った。
元気なアイツに会いたくて、って俺は何を考えてるんだ、と自分にあきれる。飛段はまだ回復してはいないのだ。
「…上も使いますって。」飛段はそう言ったが、
ドアが音もなく開いた瞬間、咄嗟に鹿丸に飛びかかり、
「伏せろ!!!」と叫んだ。
訳が分からないまま、バランスを崩した鹿丸が見たものは、
ドアから銃を撃った男と、その弾を点滴スタンドで弾いた飛段の姿だった。
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