飛段が目覚めたということで、医師が回診にきた。

点滴や人工呼吸の管、腹部に受けた弾の摘出処置について、その経過をみてまだしばらくは入院しなければならないことなど、いろいろと説明されたが、ぼんやり聞いて頷くしかなかった。

それが終わると、待ってましたとばかりに警察が来た。

「体調万全でないのにすみません、事情聴取をしなければならないもので。ご協力感謝します。」

同行した刑事は挨拶もそこそこに、撃たれた当時のことを聞き始めた。

あの時、護衛がいつ忍び込んできたか分からなかったのは、角都が盾になって見えなかったからだが、飛段は、よく覚えていない、何が起こったか分からなかった、小遣い稼ぎで登録した斡旋所から人が来て、ホテルで客に引き合わされただけだ、といった。

ターゲットが持っていた名刺は、角都が処分しているはずだし、万が一どうにか探して倶楽部の住所を捜索したところで、角都がでっち上げた架空の会社なのだから実態はなく、捜査は無駄に終わるはずだ。

「…貴方を指名した客が狙われたのか、貴方が狙われたのか…
何か心当たりはありますか?」

心当たりはない、と首を横に振り、逆に、
「…俺を撃ったヤツは…?…」と聞き返した。

「即死でした。」

刑事の言葉に、飛段は顔をしかめて応対した。
胸の奥底では、角都の脅威になるやっかいなSPなど居ないにこしたことはないのだから、静かに安堵した。


飛段は気分がすぐれない顔をして、ベッドの柵にもたれた。
刑事はまだ少し質問したそうだったが、疲れた様子にまた来ます、と退散するしかなかった。



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