「面会謝絶の為、お荷物はお預かりします。
ご家族…?あ、ご友人で、ではお名前をどうぞ」
昼下がりの木の葉救急病院の受付は閑散としていた。
やはり飛段を見舞うことはできなかった。
新品のパジャマとか下着など、客にプレゼントでもらったものを着替えとして持ってきたのだった。
今夜から店に飛段が居ない。
それがどういう事態を招くか、鹿丸は考えたくなかった。
(ホスト自身の都合で欠勤なんだから
飛段を永久指名した客にはこの際、
特別に場内指名(一日だけの指名権)をサービスしねえと、
客が離れちまう。
あいついつまで休むか分からねえし。
場内指名でも客が来てくれたら、
俺らも他卓から声がかかるからめっちゃ忙しくなるってことだし、
もし飛段の客が来なかったら、
店としては収益が下がるってことで……
どっちに転んでもハードなのには変わりない。
はぁー。No. 1とかNo. 2とかそれなりに競ってたけど、
どちらかというと俺はツートップで良かったんだけどな。)
煙草の煙が空に溶けていく。
「飛段いねえとキツいな。まじ。」
こんな時に不謹慎だと思うが、本音だった。
声に出すと幾分気が紛れるかと思ったが、そうでもなかった。
それにしても飛段は回復しているのだろうか。
撃たれた直後の苦しげな顔が脳裏をよぎり、胸がズキッと痛む。
そもそも昨日、誰と会っていたのだろう。
最初に一緒にいた男は、誰だったのだろう。
大体、治安のいいこの国で撃たれるなんてマトモじゃない。
あいつにはヤバイ過去がある。
それは勘だが、鹿丸は確信した。
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