夜明け前、鹿丸は一人暮らしのマンションに帰り、暗い部屋の冷たいベッドにどう、と倒れ転んだ。

眠い。
仕事、客とホテル、警察。今日は色々ありすぎた。
また今夜は店なのだから、休息を取らなくては、身が持たない。
半分目を閉じた時、スーツのポケットで携帯のバイブが鳴った。
女からかもしれない。鹿丸は無視を決め込もうとした。
だが、携帯はしつこく鳴っている。



「…はい…」

仕方なく出た。相手は喋らない。いや違う。声が遠いのか、誰か喋っている。

「はい!?」少し語気を強めると、相手は


「…鹿…丸さん、…聞こえますか、」と言って息をついた。



ーーひ、飛段?


酔いも眠気も一気に覚めた。

治療は?終わったのか?



「…飛段、お前、大丈夫か!!何があったんだよ!…」

「…しばらく、店に出れない…んで、

オーナーに…連絡取れなく…て…すんません……また連絡しま…」


「…分かった!今日行くから!」


「…は…大丈夫……です」


電話はブツッと切れた。
鹿丸の頭はまた冴えてしまった。

(飛段、お前ヤバいことに首突っ込んでんじゃねーのか?

撃たれるなんて、相当だろ……。)



切れた携帯をベッドに投げると、鹿丸はネクタイを緩め、服を脱ぎ始めた。

ふと、身寄りのない飛段の、着替えなどが気になった。




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