鹿丸は、情事のあとに煙草をふかすのが習慣になっていた。
(…はぁー…調子狂う…全く)
今日の俺は一体どうしたんだ。鹿丸はため息をついた。
今日はなんだか女の喘ぎが半端でなかった。
それにどうも、一度ではなく二度イカせたらしい。
枕営業は誰にでもしない。
特別にした相手から、スゴく良かった、と言われるのは当たり前としても、
明日の店のことを考えると、二度イカせるなど自殺行為だ。
いつも良くしてくれる客へのお礼みたいなものだから、
これはボランティア以外の何物でもない。
寝る時間をさいてまでやるのは、鹿丸の信条に反していた。
アフターやホテルで逢うことは、ホストにとっては結構キツい仕事なのだ。
それにしても今夜は、やたら鹿丸、鹿丸と名前を叫ばれるし、二度目に果てた後、もうすでに女は幸せそうに寝息を立てている。
…だりぃんですけど…!
自業自得なのだが、夜景の窓に映った自分を見てまたため息をついた。
と、ホテルの下に救急車が止まるのが見えた。
しばらくして、廊下から数人の走るような足音や、器具の音がし、鹿丸はこの階の客が運ばれるのだと気づいた。
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