自分を遮った飛段の手が
静かに降ろされてゆくのを見ながら、鹿丸は行き場のない自分の手を引っ込めたが



偶然とはいえ
飛段の手に触れて初めて


ほっといて欲しいという我が儘で遮ったのではないと



傷にも
その理由にも

触れるな

踏み込むなという

遠慮がちな拒絶が含まれていたのだと


気付いてしまった



そして

黙ったまま
自分を透過して何かを見ている、自分の知らない飛段が
目の前に居ることに気付いた



「……怪我しねえようにな……今さら遅いけど」


「…すんません鹿丸さん…
気をつけます」


とってつけたような会話が交わされた。

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