過去外伝7

―2年前―。

旅を続けて数週間。
飛段が目を覚ますと、着替える途中の角都の背中が見えた。白いワイシャツを着、ネクタイを締め、黒い上着を着ている。

放蕩の旅の終わりを告げているようで、飛段は小さくため息をついた。二度寝しようと寝返りを打ったが、すっかり目が覚めてしまった。いつか角都にかかってきた電話が関係しているのだろうか。
後ろから角都を眺める。
角都のこういうスタイルは嫌いではない。
むしろ、それを引き剥がして襲ってやりたくなるほど似合っている。
けれど、今はふざけるべきではない雰囲気が漂っていた。

「何か、あったのか。」

仕方なく飛段は起き出してバスローブを脱いだ。

角都は飛段に背中で言った。

「仕事が、見つかった。…今までの生業からすると、かなり趣味的な仕事だがな。」

「…仕事なんか。…しなくてもいーじゃねえか。」

分かってはいてもブーたれてみたくなるものだ。

「…一緒に仕事できても、か?着替えろ飛段。
書類は提出済みだ。研修期間を経て採用、過去は不問だと言われている。金は尽きるものだ。稼がなければな。」

そう言われて飛段も、分かったよ、とクローゼットを開けてみると、新品のスーツが掛けてある。

「角都、俺に買ってくれたのかよ!?!」

飛段は面倒くさそうに、だが嬉しそうに着替え始めた。



―そして2年後の現在―。

時間がきて、鹿狗と鹿丸は拍手で老齢の博士を迎えた。

博士は車イスに乗ってステージに現れ、うしろにはSPが付き添っているのが見える。

そのSPは、銀髪のオールバックだった。


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