過去外伝6


―2年後―。


「…用意できたか?」

「…ああ。」

久々に実家に帰った鹿丸は鹿狗に返事をして、吉乃の見送りに応え、鹿狗と歩き出した。



鹿丸は念願の国立大に合格した。引き留められたホストの仕事は、なんとかオーナーを説得し、1年前に辞めていた。
これから6年間、必死で勉強して、国家資格を取らなければならない。

今日は、国際的に著名な医学博士の講演会に、鹿狗と共に出ることになっていた。まあ、鹿狗のお供である。

「…お前は頭がいい。だからとにかく、見聞を広げるんだ。世の中、自分に関係ないことなどない。いろんな話も聞いておけば、その時分からなくても後から分かるようになる。そう思うだろ?」

鹿狗はそう言った。

電車に乗ってから、鹿丸は聞いた。

「…おふくろとは上手くいってるか?」

「…ああ。最近は待受を変えられた。俺と吉乃のツーショットに」

鹿丸は思わず笑った。相変わらず尻に敷かれているんだな、と妙に安心した。
それでこそ奈良鹿狗だ。

俺も親父みたいになるのか、まあ不安ではあるが、そんなことよりまずは今日だ。

そうこうしている間に最寄り駅に着いたので、鹿丸は鹿狗と共に、講演会の会場を目指した。


会場の周辺は厳重な警備が敷かれていて物々しい雰囲気だった。
入口で荷物の点検などを受け、中に入ると警備員が通路ごとに並んでいる。
やはり著名人は財産だ。いろんな理由で守られるのだろう。鹿丸は鹿狗と2階席に座った。

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