過去外伝5
バスローブのまま、抱き合って眠ってしまったらしい。
静かな寝息をたてて寝ている飛段を見ると、昨夜の淫らな振舞いが嘘のようだ。
角都は起き出してホテルの広い窓から美しい明け方の空を眺めた。
飛段と旅をするのが夢だった。あいつがそう望むから、いつしかそれが俺の夢になった。
ガツガツ稼がなくても、しばらく遊んで暮らせるくらいの金は出来たのだから、この旅を楽しめばいい。
角都は飛段のはだけた胸元にキスして、顔をうずめてみた。
飛段はフフ…と寝ぼけたまま、両手で角都の頭を抱きしめると、また静かに寝息をたて始めた。
危険と隣り合わせの日々が遠退いていく。
ただ、一つ不安があるとすれば。
この穏やかな日々をいつまで過ごすことができるのだろうか、ということだ。
金の問題ではない。
暴力に染まりすぎている傷痕だらけのこの体を遊ばせておくと、ロクなことにならない。この世界で鍛えられたおかげで、普通の人間より体が強靭な分、精力もある。
それは、程度の差はあっても飛段も同じだと思う。
連日、昼も夜も激しく求め合うのはいい。だが、良いと、だんだんエスカレートしてさらに求めるのは分かっている。とにかく、いつかは俺を受け止める飛段を傷つけてしまう気がする。
何か、やらなければ。
銃を手離さず生きてきた、この腕を生かせることを。
その時、一本の電話が鳴った。
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