どちらからともなく体を離す。

「……お前と居ると…退屈しなかったのにな。」

鹿丸がそういうと飛段は、

「…No.1、はっきり俺が好きだって言えよ。あんなキスしといて。」

と言った。鹿丸が赤面していると、飛段は手を伸ばして角都の席に置いていた紙袋をゴソゴソやって、自分のスーツのポケットに入っていた何かを取り出した。

「…取っとけよ。俺の形見だ。」

「…?何……スパナ?……ちょ、…犯罪臭が半端ねえんだけど!?
ぜってー要らねえ!…いくら好きでも要らねえ!」

鹿丸のツッコミに、ほらな、好きだろ、けど要らねえか、と飛段は笑った。

「俺たちと関わったことで、お前にはこの先迷惑かけるかもしれねえ。
気ィつけろよ。」

鹿丸は平気だ、と頷いた。

じゃあ、行くぜ、飛段はそう言うと、助手席から降りて、後部座席の角都の腕を取り、降りるのを手伝おうとした。
まだ本調子ではないようだが、その男は鹿丸を見て礼をした。

「…助かった。手術の金は必ず振り込む、と親父さんに伝えてくれ。」

「…俺も、親父も、貴方に命を助けられました。こちらこそありがとうございました。」

飛段は、二人が丁寧に挨拶し合うのを代わる代わる見ていたが、角都に、行くぞ、と言った。
もうその横顔は先ほどまでの飛段ではなかった。

鹿丸は二人を見送った。


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