明け方。
鹿丸贔屓の例の客は次回アフターの約束を取りつけて帰っていった。

客がはけ、控室にあがると間もなく飛段があがってきた。

「…携帯、忘れてたの鹿丸さんが届けてくれたんだ…すいませんでした」


鹿丸が同伴だった為、仕事中今日はそんなに絡むこともなかった飛段は、礼の挨拶が今になった事を申し訳なさそうに言った。



「…いや、全然構わねえよ…
それよりお前さ…
なんかバンソウコウ取られてただろ
どうしたんだよソコ」


一瞬、部屋の空気がピンと張ったような気がした。

だが、すぐにそれは飛段の軽い口調で消え去った。

「…ん?たいしたことねぇし!
今日はあの客めちゃめちゃ貢いでくれちゃったからラッキーだった」

「吹き出物とかに…見えねーんだけど俺には」


鹿丸が何気なく手を伸ばすと飛段の左手がそれを遮った。

「…大丈夫だって」

カスリ傷のようなモノが飛段の右頬にあるのが見えた。

「…怪我してんじゃねーか」

「…ちょ、ドジっただけだ…」

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