俺の中で何かが弾けた。
夢か現か定かでない、ただ目の前の世界に咲いている曼珠沙華の花を引きちぎりながら、そいつを地面に引き倒した。
朱い花びらがそいつのカラダに散ったのを見て、無茶苦茶にしてやりたい衝動にかられ、ヤツの首に両の手を伸ばした。
さっきの飛段の言葉が
哀しみを帯びていたのもいらつく。
こいつも相方を失って
こんな美しい姿で蘇って
孤独に苛まれたあげく
俺を誘ってる。
そんな気がする。
憎しみしかない。
復讐という思いをぶつけ
目茶苦茶にする対象でしかない。
それでも。
今よりは人間らしく生きられるかもしれない。
「決めるのは俺だ。お前じゃねえ…」
ゆっくりと飛段の顔に顔を近づける。
首筋に顔を埋めると背中に腕を絡めてきた。
いつの間にか雨は止んでいるようだった。
「…狂っちまったらしい
俺もアンタも」
「…クソガキ…」
ため息なのか何なのか分からない深い息が口をついて出、飛段が呟いた声が俺の耳朶にいつまでも響いていた。
(完)
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