「なんか、寂しくなったよなあ」

部活の休憩時間、真琴は自分が作ったスポーツドリンクを飲んでいる財前に言った。

真琴に話しかけられた財前は、隣に居る真琴をチラリと見遣る。

真琴の目線の先にいたのは、思い思いに体を休める部員たちだった。

いつもと同じ光景であるものの、いるべきはずの部員の姿がちらほらない。

それもどいつもこいつも強烈なメンバーばかり。

真琴は大仰に天を仰ぎ、遠い眼で空を見つめた。

「金ちゃん、ゴンタクレてへんかな…。他校のみんなに迷惑かけてへんとええけど…」

「心配せんでええんとちゃいます、先輩3人おったら何とかなりますやろ」

「千歳、二翼の片割れくんと仲良うやってるかな…」

「別に千歳先輩と橘さんは喧嘩別れやないんやし、大袈裟ですわ」

「喧嘩か…謙也、侑士くんと喧嘩しとらんかな…」

「喧嘩っていうよりルーキー自慢の言い合いっスけどね」

「白石、いらん気遣うてへんかな…」

「それは金ちゃん次第ですわ」

真琴が言うこと言うことに、財前は厳しい返答をする。

財前は最後に溜息をつくと近くのベンチに座り、真琴にスポーツドリンクのおかわりを要求した。

それを真琴は無言で受け取り、ボトルの蓋を開けて新しいスポーツドリンクを注ぎ入れる。

「冷たい後輩やな、先輩らが心配やないん?」

「心配したってしゃあないですやろ。向こうも練習、俺らも練習。場所が違うだけですわ」

「つれなーい」

注ぎ終わったボトルの蓋を閉め、真琴は財前に手渡す。

ふてくされている真琴には関心を示さず、財前はそれを受け取って続きを飲み始めた。

真琴が口に出した4人は、強化合宿に参加しているメンバーの名前だった。

全国大会を控え、全国の強豪校が合同合宿を行っているのである。

そこに部長の白石をはじめ、謙也、千歳、金太郎が選ばれたというわけだが…何故かメンバーに選ばれたはずの財前は大阪に残っていた。

「ところで何で財前はここにおんの。自分も選ばれとったやろ」

「南の島なんてめんどいだけっスから」

「なっ、あんたそんな馬鹿正直な…」

何の悪びれもなくさらっと言い放つ四天宝寺の天才の度胸に、真琴は呆れるしかなかった。




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