「なぁ光」
「なんや」
「あたし、彼氏できてん」
そう言うと、光は目を真ん丸に見開いてあたしを見とった。
そしてゆっくりと、ベッドから体を起こす。
見ていた雑誌が床に落ちた。
「今、なんて…」
「やから…彼氏、できてん」
あたしと光はいわゆる幼馴染み。
家がお隣さんで、同い年で、いい遊び相手やったしずっと一緒におった。
中学上がっても平気でお互いの部屋に入り浸って、ときにはそのまま寝てまうくらい、心許せる存在やった。
他の誰といるより光といるのが楽しくて、友達が恋に夢中になっていく中でも、あたしは光と一緒におった。
でも、最近になって気づいてん。
いや、気づかされてん。
あたしが光と一緒にいるのが一番楽で楽しいように、光もあたしといるのが一番楽で楽しいんやって。
やから光は学校中の女の子から告白されても、誰とも付き合わんのやって。
光のファンからそう言われた。
あたしは光とずっと一緒におりたいけど、光を拘束しときたいわけやない。
光にもちゃんと恋愛とかして欲しい。
そうちゃんと伝えたら、あたしが彼氏を作って光から自然に離れれば、光も自然にそうなるだろうから、彼氏作ればって彼女たちは言った。
安易な考えやけど、あたしもそれしか思いつかんくて。
そして周りを見渡せば、あたしは意外とモテる部類に入っていたらしい。
すぐに付き合ってって言ってくれる人がおった。
同じクラスにいたのに、全然彼の好意には気づかへんくて。
ホントにあたしの世界は光中心やったんやなって思い知った。
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