「あの…これ…!!」

その女の子は聞き取れるのがやっとのか細い声で、旦那の胸にそれを押し付けた。
真っ赤な包みの、でもリボンが可愛いらしい箱。

旦那は眼をまん丸に見開いて、それがずり落ちる前に、反射で受け取った。
その女の子の顔を凝視したまま、ぴくりとも動かない。
そしてその女の子は、その箱が落っこちないとわかると、「ごめん!!」と叫んで走って行った。

気持ちはわかるんだけどねぇ。
とにかく放心状態の旦那を起こそう。
そして我に返った旦那に、言い聞かせるように言った。

「旦那、それ、何だかわかるよね?」

「…この甘い匂いは…チョコでござる…」

「それを、誰に貰った?」

「…名前殿、でござる」

「そうそう。で、旦那、その名前ちゃんはどこに行った?」

「…走って、行ってしまったでござる…」

「旦那、何で追いかけないの?」

それを強く言うと、旦那の眼が揺らいだ。

「旦那、初なのもいい加減にしな。名前ちゃんが壁を壊してくれたんだ、このチャンスを逃していいの?」

「名前、殿…」

「旦那、素直になりなよ。名前ちゃんのこと、どう思ってるの?」

それを聞いた瞬間、箱を握る旦那の手に力が入った。
伏せていた視線を上げ、名前ちゃんが消えて行った方向を見る。

そして次の瞬間、駆けだした。
もちろん名前ちゃんが走り去った方向に。
旦那の背中を見送りながら、やれやれとため息をついた。

「そんな目するくらいなら、さっさと壁壊しなってね」

もう旦那は追いついただろうか。

傷つくことを恐れて壁を壊せずにいた、友達以上恋人未満のクラスメイトに。


END



[*前] | [次#]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -