※影浦隊がまだA級のときの話



「最終スコア5対3対2、影浦隊の勝利です!」

桜子の実況が響いた瞬間、観覧席が沸いた。
今日はA級ランク戦、下位グループの部。
混戦を極めたランク戦を制した影浦隊に、賞賛の声が上がっていた。

モニターの向こうのでは、生存点に貢献した二人が合流しようとしている。

「いえーい!カゲ、ナイス!」

やたらハイテンションな花音が影浦に駆け寄り、拳を影浦へ突き出した。
その意図に気づいた影浦は一瞬顔を歪めたが、しぶしぶグータッチに応じる。
影浦の意外な行動に、別の意味でまたどよめきがおこった。

「さすが花音ちゃん、ですね」

驚く堤に、諏訪もうなずく。

「花音が入って、点取り屋の負担が減ったのは実感してんだろ」

以前の影浦隊はアタッカー・影浦を点取り屋とし、ガンナー・北添とスナイパー・絵馬がそれを支援する3人チーム+オペレーターの部隊だった。
だが最近そこに加入したのが、花音である。

当時木虎に次ぐ13秒という驚異的な戦闘訓練記録を叩き出した期待の新人。
現在は仁礼光にスカウトされて影浦隊に所属し、アタッカーの片翼として活躍している。

その活躍は目覚ましく、今日のようにあの影浦と連携をとり、なおかつ影浦に有無を言わせない押しの強さも持つ。
この驚異さには、目を見張るものがあった。
諏訪隊の面々もそう思うひとりだ。

「花音って、あれで俺と同い年ですよ」

「はあ!?てことは中坊か!」

「影浦にタメ口の女子中学生。うーん、すごいな」

俺なら震え上がります、とその場面を想像したのか、笹森は震え上がった。
そんな話をしながら、人の波に乗って観覧席を後にする。

「だからおまえらよくつるんでるんだな」

「まあそれとアタッカー同士ってのもありますけどね。意外と同い年でアタッカーがいなくて」

「ああ、そういえば俺や諏訪さんに会う度、色々教えてくれってせがみますよね」

「そういうことだったのか。まったくいい迷惑だぜ」

「でもアタッカーなら身近にいるんじゃないのか?影浦とか」

「影浦先輩は、あんまり教えてくれないそうです」

「ハハ!そりゃそうだ。あの影浦だしな」


「なになに〜?カゲのはなし?」

そのとき、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
三人がびっくりして振り返ると、そこには花音が立っていた。
その花音の後ろにある自販機の近くには、影浦と絵馬もいる。
影浦の表情に特段変化はないので、さっきの会話は感じ取れなかったようだ。

影浦隊の3人は、手に缶ジュースを持っている。
どうやら試合後の息抜きのようだ。
離れたふたりに声をかけると、絵馬だけが会釈を返した。

「よお花音、さっき見てたぜ」

「見てくれてたの?私、どうだった!?」

「まあいい動きだったぜ」

「諏訪さんありがと〜。華麗なる2点だったでしょ〜?」

「ふざけんな花音!最後のヤツは俺のポイントだろうが!」

花音の言葉に、影浦が噛みついた。
どうやら5点中、生存点を除いた残り3点の配分でもめているようだ。
ちなみに残りの1点は絵馬の狙撃である。

「でも桜子ちゃんが、結城隊員が両足削っていたのが大きい!って解説してたよ」

「おまえの攻撃が浅かったから、俺がトドメさしたって意味だろ」

「だとしても私のおかげじゃん!」

ここで個人ランク戦でも始めそうなふたりの剣幕に、「まあまあ落ち着いて」と堤が仲裁に入った。
本来ならここは、同じ隊の絵馬が止めに入るべきなのだが。
堤だけでは抑えられそうになかったので、諏訪も口を挟む。

「おまえら模擬戦以外で戦闘すんなよ、厳罰くらうぞ。したきゃブース行け」

そこまで言われて、ふたりはしぶしぶ喧嘩をやめた。
その様子に、諏訪隊の面々はほっと胸をなでおろす。
もう少しで騒動の巻き添えをくうところだった。


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