永井圭に呼び出されたのは、結良の家から遠く、人気のないさびれた自然公園だった。
中野は年甲斐もなく遊具で遊び、永井圭はそれをベンチから冷めた目で見ている。

先に結良に気付いたのは永井圭で、中野は永井に呼ばれて結良に気付き、駆け寄ってきた。

「来てくれてよかった!遠かったろ、ありがとな!」

「ううん、そんなことなかったよ」

「皆がここだって譲らねえんだよ、ケチだよな」

「皆…?」

「うん、アイツとか他にも一緒に行動してる人たちが居てさ」

中野が永井を指さしたので永井に目を向けると、こちらに歩いてきているところだった。
だるそうに歩く永井に、中野は失礼だろ!と一喝する。

「あの、中野君」

「なんだ?」

「私、謝りたくて。この前電話してくれたとき、怒ってごめん。中野君は色々行動を起こしてくれてたのに、待ってただけの私が感情的になっちゃって…」

この数週間、中野はちゃんと行動を起こしていた。
結良たちを助けてくれた消防士の亜人の気持ちを汲んで行動していたのだ。

なのにグラント製薬に飛行機が墜落したときは中野から連絡がこないことに憤って、連絡があったときもその調子で苛立ちをぶつけてしまった。

あらためて中野から仲間の存在を感じると、申し訳なさで胸がいっぱいになる。
中野に会ったら、謝ろうと心に決めていた。

「本当にごめんなさい!」

頭を下げ、精いっぱいの気持ちで謝る。
ほんの少しの沈黙が、とても長いものに感じられた。

「結良は真面目だなあ」

そう柔らかい声が聞こえると同時に、下げた頭を雑に撫でられた。
頭を上げると、笑った中野と目が合う。

「そんなこと気にしてないぜ、俺」

「中野君…」

「俺こそ待たせて悪かったな」

「ううん、連絡くれてありがとう…」

中野に優しくされ、結良の目に涙が浮かんだ。
佐藤から逃げ出した後、心配でたまらなかった。

佐藤たちに見つかるかも、佐藤が自分を警察に売ったかも。
そんなストレスを抱えながらの日常生活は、たまらないものだった。
だが中野の言葉で、それらが報われた気がした。

「ああもう泣くなよ!俺が泣かしてるみたいだろー!いや、俺が泣かしたのか?」

「ご、ごめん…」

「謝るなら泣き止め、な?」

再び頭を撫でられる。
先ほどとは違い、今度は少し優しい手つきだった。
その気遣いに、また涙が出てくる。

困ったように顔を覗き込む中野に心配をかけたくなくて、結良は涙をぬぐって笑ってみせた。

そんな結良に、中野も笑って見つめ返す。

怖いこともたくさんあったが、集会に行ってよかったと思った。
だって、中野に会えたのだから。

仲間であり信頼できると思っていた佐藤からは裏切られたが、結果的に結良のそばには中野がいる。
もう孤独に苛まれないのかと思うと、とても満ち足りた気持ちになった。
できれば中野も、そう思ってくれているとうれしい。


「おまえら、僕のこと忘れてるだろ」


「うわあ!!」

永井に声をかけられ、二人は勢いよく離れた。
永井には申し訳ないが、完全に忘れていた。
完全に二人の世界だった。恥ずかしい。









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