ことの始まりは、亜人研究施設の襲撃事件。
自らを亜人と名乗る男、佐藤が亜人の集結をテレビで訴えたのだ。
色んな情報や推測が飛び交う中、世間的にはその集会は成功しなかったと捉えられている。

だがあの集会には裏があった。
亜人にしか見えない、亜人しか知らない未知の物質。
それはときに人のかたちを持ち、亜人の手足となり、声となる。

それが厚生労働省の前を占拠していたのだ。
結良もそこで本当の集合場所を聞いた一人だった。

警察が警戒している中、動くことに不安も恐怖もあった。
だが佐藤は自ら世間に名乗り出た、初めての亜人。
自分が亜人と隠して生きることに辟易していた結良にとって、佐藤の行動と言葉は尊敬にあたるものだった。
だから佐藤に会いに行こうと決めたのだ。

しかし亜人の権利などとうたっていたのは対外用で、佐藤の本心ではなかった。
佐藤の本当の目的は、暴力による人間の支配。

それに否定的な亜人は、その場で粛清された。
反対したうちの5人のうち、3人は捕縛。
逃げ出せたのは結良と、中野攻と名乗る少年だけだった。

佐藤らから逃げだせたものの、二人はただの未成年の子供。
佐藤の蛮行を止める手立てなんて、そうそう浮かぶものではない。

中野と結良は連絡先を交換して別れたが、中野からはいまだ連絡はない。
その間佐藤が関与していると思われる飛行機墜落事件もあったが、そのときも音沙汰はなかった。

そして待ちに待った電話が鳴ったのは、その数週間後のことだった。









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