質問なんですけど、いいですか?

何で彼は“ご褒美”にこの指輪を渡してきたんでしょうか。

普通少女マンガ的な流れで行けば、ここは「俺のこと名前で呼んでくれません?」とか「今度部活が休みの日、付き合うてください」とかじゃないんだとろうか。

そう思いません?

それなのに何で彼はいきなりブツを、しかも指輪を「付けててください」なんて言ったのだろう。

先生、疑問です。











「あらぁ美波センセ、可愛い指輪付けてはりますねぇ?」

「か、鏑木先生…」

「美波センセにしては珍しいけど…うん、よく似合うてるで」

「あ、はは…。ありがとうございます…」

「やぁね、いったい誰にもろたんやろ〜」

「だ、誰にも貰ってません!!自分で…!!」

「まぁた〜。隠さんでもわ・か・っ・て・る・で〜」

「あ、ははははは…」

悩んで。

結局付けて行くことにした。

だって貰ったからには付けて行かないともったいないし、失礼だし。

でも正直、何でこれを付けて行く選択をしたのか自分でもわからなかった。

満点のご褒美だから?貰ったから?付けないと財前くんが悲しむから?

…多分どれも違うのだ。

それは多分、貰って私がいい気分だったから。

私は単純に、彼からのプレゼントに喜んでいる。

教師としてあるまじき思いで、教師にあるまじき行動だった。


「あー!!センセーが指輪付けとるー!!」

「ほんまや!!先生それもろたん!?」

「彼氏!?彼氏!?」

「もしや可哀想な自腹!?」

「ええーい!!うるさぁい!!授業始めんで!!」

クラス名簿と教科書の束で教卓を叩き、からかう声を無理やり中断させる。

一瞬静かになったときを見逃さず、さっさと教科書を開かせた。

最近の中学生は何て目敏いんだろう。

確かに指輪をしている先生は既婚者くらいで、独身でなおかつ若い先生が指輪をしていることは珍しい。

でもだからって…気付くの早すぎない?

しかもそれを1限目から指摘され、それが財前くんのクラスだということにもにもダメージを受けていた。

もしかしたらそれさえも彼が仕組んだことなのではないか、と思わず考えてしまう。

そう思ったら何だか怒りが沸いてきて、ここが他の生徒の目がある教室だということも忘れ、財前くんをキッと睨んだ。

しかし視線の先に居たのは、頬杖ついたまま驚いた顔で私を見つめる財前くんだった。

予想外の財前くんの表情に、一瞬固まる。

私の予想では、ニヤリと小憎たらしい笑みを浮かべて勝ち誇っている財前くんがいるはずだったのに。

そしてハッと我に返り、すぐに視線を逸らした。

いつもとは違う、変なリズムで心臓が波打つ。

寒くもないのに、背筋が冷たい。

そのあとは授業を始めても、心ここにあらず。

そんな心地だった。


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