綺麗な財前くんの顔を凝視したまま、思考が止まる。

付き合うって、あれよね。男女交際。

誰と?財前くんと?私が!?

え!?何で!?

あまりの衝撃に頭が煮えそうになる。

しかしそのとき、一つの答えが閃いた。

これなら、納得できるという答えが。

「財前くん」

「はい?」

「大人をからかうのもいい加減にしなさい」

一瞬の沈黙。

そして財前くんはポカンと放心していた。

驚いた顔でも様になるのが、ちょっと癇に触った。

「いくら私でも、何回もからかわれないわよ」

キッと財前くんの目を見て言うと、手を振りほどいて机に向き直る。

いけないいけない、生徒にからかわれているようじゃ教師失格だわ。

うんうんと自分の機転に感心しつつ、再び赤ペンを握った。

もう財前くんったら油断も隙もない子ね。

危なく引っかかるところだったじゃない。

でも、悪い気はしなかったところがイケメンマジックというか…。

うん、イケメンのせいよ!!

ちょこっと感じたトキメキの全てをイケメンのせいにして、答案に目を通す。

無言の準備室には、ペンを走らせる音だけが響いていた。

しばらく無心で採点をしていると、財前くんが席を立つ気配がした。

帰るのかと思えば、すごい勢いで抱き寄せられる。

気が付けば、目を伏せた財前くんの顔が目の前にあった。

さっきよりもさらに近い財前くんの顔。

そして唇に柔らかい感触。

キスされていると気付いたときには、もう手遅れだった。

財前くんの手が後頭部に回り、もっと唇が密着する。

やめさせようとして抵抗してもがくが、びくともしない。

ようやく唇を離して貰えたときには、財前くんにしっかりとしがみついていた。

財前くんの鷹のように鋭い眼に囚われ、視線を逸らすことができない。

「俺が本気やって、わかってくれはりました?」

ニッと口端を吊り上げて笑う財前くんは、いやらしいくらいかっこよかった。

あれだけけなしていた生徒にときめくなんて、私って実はショタコン!?


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