【2.リヴァイ班生存ルート】 アニは巨人の項の中から、たった今リヴァイによって開かれた隙間からのぞく外の世界にぞくりと背を震わせた。巨人の体内はいわば不可侵の領域だ。他の巨人と違い、人間が巨人となる場合は細かい動きで向かう者を圧倒的な力でねじ伏せることができる上、硬化能力まで備わっているのだから。ありえない。こんなの――予想できるわけがない。 女型の巨人を捕獲すれば、何よりもまず中にいる人間を引きずり出そうと考えることは容易に想像ができた。巨人ごと移送するよりもはるかに安全で効率がいいからである。そして、それは調査兵団の精鋭が行うだろうということも。現に人類最強の男と称されるリヴァイと、彼に次ぐ実力者ミケが実行者であった。当然、女型の巨人の狙いであるエレンはその場から遠ざけて待機させるだろう。適当なタイミングで巨人を呼び寄せ、混乱に乗じて脱出、そのままエレンを奪取して逃走する予定だった。 だが歯車は狂った。 待機していたエレンの近くにはリヴァイ班だけでなく、若き天才集団――通称キセキの世代の五人が居たのである。どうやら彼らはある人物の頼みでエレンの護衛についていたらしい。「各自指定された班で待機せよ」という命令よりも優先したのだという。 人数差と力量差は圧倒的だった。 エレンはおろか、誰一人殺すことも出来ずにアニは全速力で逃走した。だが休みなしの巨人化は思った以上にダメージが大きく、速度は出ない。それでも普通の兵士ならまけていたはずなのに。アニに追いつき、逃がさないとばかりにぐるりと包囲したのは、リヴァイとキセキの世代の五人だった。 結果、アニは百戦錬磨の人類最強と若き天才たちに、負けたのだ。 (ああ…) 不意に、父親との会話が脳裏に浮かんだ。 ――アニ。ひとつだけ、ひとつだけでいい。頼みがある。 ――この世のすべてを敵に回したっていい。 ――この世のすべてからお前が恨まれることになっても。父さんだけはお前の味方だ。 ――約束してくれ。帰ってくるって。 そうだ、負けるわけにはいかない。こんな所で。 残った力を振り絞る。光を放ちながら、アニの身体は足の爪先から結晶に包まれていく。 リヴァイたちも異常に気づいたらしく、慌てたような声が耳に届いた。だが彼らも満身創痍の上、距離がある。間に合う筈がない。 (私の勝ちさ) 結晶化してしまえば外部から壊されることはない。情報を聞き出すこともできない。つまりは、「勝ち逃げ」。 アニは勝利を確信しながら、そっと瞼を閉じた。 「困ります」 澄んだ声音にはっと目を見開いた。 聞き覚えのある声だ。アニと同じく104期生であり、エレンの幼馴染。影がとにかく薄く淡々とした人間で、話したことは少なかったが悪い印象は持っていなかった。 だがなんで。なんで、ここに。 「逃げられては困りますよ、レオンハートさん。あなたには、聞きたいことが山程あるんですから」 「いつの、間に……」 手刀が首筋にいれられ、衝撃で意識がフェードアウトしていく。 最後に横目で見えた水色の髪の少年は、困ったように指で頬を掻いていた。「そう言われましても」 「最初からいました」 影が幻になった日 (彼こそが″幻の6人目″) - - - - - - - - - - 2014.03.16 エレンくんがいることで、黒子っちはキセキの世代たちとの仲違い阻止 ↓ キセキの世代たちはエレンくんたちと同い年なわけですから、事前に団長から女型捕獲作戦は教えてもらっていない&捕獲作戦には参加せず ↓ ということはフリーなので、エレンくんの護衛に回ることができる ↓ リヴァイ班&キセキの世代でアニを迎え撃つ。人数差力量差でアニは逃走 ↓ 十分な足止めのおかげで兵長無事合流。キセキメンバーと兵長の共闘で女型の巨人捕獲 ↓ 例の結晶化は、持ち前の影の薄さを利用して黒子っちが阻止(実は最初からいたよ!) |