やさしい?

※雰囲気

大丈夫よ、なまえ。あなたは素敵な子だもの、もっと良い人が現れるはずよ。
ベータは優しく微笑んで、私を慰めてくれる。私はベータにそう言ってもらいたくて、何かあるとすぐ愚痴を溢してしまうのかもしれない。今だってこうして、好きな人がサイテーだった!という話を身ぶり手振り加え話していたのである。
私だったら嫌だ。人の愚痴をなんべんも聞きたくない。けれど、ベータが愚痴を聞いて欲しいというなら喜んで聞くだろう。何時間でも。自分のしようがない愚痴をうんうんと言いながらちゃんと聞いてくれるベータは素晴らしい女の子だ。
「私、男の人がよかったなあ」
「どうして?」急に話が逸れたので、少しベータは驚いたふうだった。
「男の人だったら、ベータとお付き合い出来るし」
「ふふ、そうね」

ベータは目を細めて、笑う。私はベータの笑い方が好きだ。笑い方だけじゃない、彼女の動作すべてが。

「なまえはもう少し自信を持つべきよ。あなたって、素敵な子だもの」

ね、と首を傾げ私を励ますベータの女神のような優しさに涙腺がゆるむ始末である。

「そんな言葉勿体ないよ」と、あまりのありがたい言葉にうろたえると、ベータは「私の言葉よ。信じてくれないの?」このように眉を下げ、悲しそうに話すものだから、そんなことないありがとう!と早口で捲し立てた。私の狼狽する姿が面白かったのだろう、ベータは声を出して笑う。

「なまえって、ホントに面白いわ」

なんて、楽しそうに言われたら私の悩みなんてどこかへ飛んで行ってしまう。
彼女に何か話すたび、彼女から元気をたくさん貰っている。ベータはそれに気がついているのだろうか?素敵な子なのは、むしろベータのほうだということに。

「いつも、ありがとう」自分なりに、心から感謝を込めて言葉を伝える。ベータはやっぱりやさしく笑って、「それじゃあ、今度一緒にお洋服でも選びに行って欲しいわ」と可愛らしくお願いをしてくるのだった。そんな簡単なこと、いくらでも、何度でもしてあげたいものだ。

☆☆


なまえは何かあるとすぐに私のところへ駈け込んでくる。だいたいそれは、好きな人がどうとか、そういうこと。私は笑って彼女を慰めるけれど、ホンットーにどうでもよかったりする。だって、そんな最低な人のことすぐ忘れるべきじゃない?すぐ切り捨てられないのがなまえの悪くて、良いところなんだけど、それにしたって何べんも聞かされるコッチの側にもなって欲しいわ。いい加減、他の愚痴相手でも探すべきよ、もっと私よりも相談ごとに長けている人に。オルカとか、とてもよい助言をくれると思うのよね。…オルカには私がいつも相談事を持ちかけているから、オルカは迷惑しているかも。そんな事いまはどうでもいいのだけど、それにしても、なまえよ。
きっと、彼女は私がやさしく慰めるから、だから私のところへ来るのかもしれない。だってしょうがないじゃない、慰めたがっている人にとげとげしい事言えないわよ。なまえが相手ならなおさら。好きなひとには、優しくしてあげたくなるのが、私の悪いところ。彼女が傷つかないように丁寧に言葉を選ぶ自分がいて、笑っちゃうんだもの。
どれだけ、やさしくしてあげたいの、って。
どれだけ、なまえから見る私を良くしたいの、って。
彼女の相談事はいつも大差ない、それでも私に吐露することで気分が楽になるなら、いいかなって、相談事を聞きながら頭の中ではそれに対してツッコミをいれつつ、口に出すのは優しい言葉ばかりのわたし。
うんうん、って頷いて、受け流していたら、なまえが、男の人だったらベータと付き合えたのに、って言う。
突拍子のない言葉に、思わず驚いてしまったけれど、彼女はふかく考えたうえでの発言じゃなかった事は、すぐにわかった。目を見れば、すぐに。どこまでも、女の子らしくて、多分きっと、何も知らない。私も何もしらないけど。
それでも、こうやって私を頼って来てくれるのは、少なからず私に気を許してくれているからで、私が怖いのは、こうしてなまえが私の眼を見て話してくれなくなることだ。
だから、どんなにつまらない話でも、なまえが聞いてほしいなら、私は何度だって聞くだろう。今すぐにでも、私のところへ来ちゃえばいいのにね。ずっとずっと、私のところにいればいいのにね。そうはいかないってことぐらい、理解出来てしまうから、やっぱり寂しくなる。
くだらない人とじゃなく、私と一緒に居れればいいのにね。そうしたら、絶対優しくしてあげるのに。心の底から、絶対。

20120109ー0208
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