がこんと扉が閉じきった。神楽の後ろ姿が窓越しに見えた。俺は叫び続けた。
「神楽、ごめん、謝るから帰ってこいよ、俺お前がいねえと駄目だ、たのむよ、なあ」
只今、出航致します。アナウンスと俺の声が被りかき消された。そして船はごぅんと上に昇った。
「神楽ぁ、愛してんだ!お前のこと愛してんだよ、だから」
神楽の後ろ姿は変わらない。頼むからこっちを振り返ってくれ。
「神楽ぁ!」
ぽたり、雫が垂れた。神楽の頬を。神楽はほんの少し首だけをこちらに向けた。
そ う ご
神楽の唇がそう動いた。
「神楽、神楽、神楽あ」
俺の瞳からも涙が溢れた。ぐちゃぐちゃになった顔で神楽の名を呼び続けた。
だけど船は離れていくばかり。嗚咽が漏れた。