神楽は歩き出した。迷いも何もない足取りで。普段ならば彼女のその凛々しさに惚れ直すのだろうが、今はそれどころではない。俺は立ちあがれなかった。ただ小さくなっていく背中を見つめている俺は、今どんな顔をしているのだろうか。悲痛の表情?苦痛の表情?それとも――憎しみの表情?

神楽は俺を置いていく。どうして?それは、俺のことが好きじゃないから。俺を愛していないから。俺はこんなにも愛しているのに、ずっとその愛に包まれて好きでもない俺に偽物の笑顔を向けていた。

なんだ、今気づくなんて。そういえば神楽は俺が好きだと言えば私もと返してくれたが、その逆はあったか。否、皆無。傷つかないように優しく接してきた自分が、馬鹿みたいだ。

俺は立ち上がり、神楽に向かって走り出した。




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -