◎ミツバ



何と、嬉しいことでしょう。

貴男に思われている事だけで、こんなにも感嘆があるとは。私はもう、それだけで幸せなのですよ。貴男は、私のすべてなのですから。
しかし、私の事で貴男が哀しみ涙を流しているのは辛いものです。もう何十年経っているのですか。人間は他の人間を踏み台にして前へ前へ、上へ上へと進まなければならないのですよ。
だから、死んで尚人々の心でしぶとく生き続けてやろうなんて、そんな自己中心的な事は考えないでください。時々、ほんの少しだけ生者の頭を過ぎる事が出来たら、それは死者にとって大きな喜びです。

そう、死なんて考える必要はありません。ただ緩やかな時の流れと自然の摂理を深く追求してはなりません。
一日の眠りにつくときに幸せな気持ちになることを心がければ良いだけです。そうしてそれが積み重なる事によって幸せが大きくなるのです。
ですから、貴男は長生きをしてください。出来るだけ長く太く、笑顔の絶えない、健康な人生を。
しかし、私はこれを貴男に伝える事は出来ません。
貴男に話しかける事も、貴男のためにそよ風を吹かす事も出来ません。貴男には、何時か自分で気づいて欲しいと思っていたのに。



貴男は、自ら絶ちました。



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