「地震来たら即死だなお前」
「本望だね」

さかただくんはわたしの書斎を見てかなり引いたようだ。ほんとうは全く活用されてなかったパパの書斎を奪った部屋なんだけど。

「こんだけ本あったら読まないやつとかあんだろ。ブックオフで売れよ」
「ない」
「そうだろうな」

じゃあ聞くな。そう思ったけど、思ったよりさかただくんは熱心に本の山を眺めてくれている。何だか嬉しい。

「あ、前テレビで見たわ、これ」
「村上春樹、わたしこれ大好き」
「どんな本? 難しい?」
「難しいのかはわからないけど、じっくり読んだらとても良いのがじわじわわかる」
「ふぅん、じゃあこれ借りて良い?」
「うん。三冊あるよ」
「ながっ」
「普通だから。まだ続くし」

はい。手渡すと、さかただくんは表紙を興味深げにじろじろと眺め、すっからかんの鞄にそれを入れた。それからわたしの白い携帯を勝手にとって、カチカチといじる。「うわ、お前友達いないのな」うるさいよ馬鹿。

「はい、じゃあな」

携帯をわたしに投げて寄越して、さかただくんは帰った。その後アドレス帳を見てみると、さかただ けどの名前が追加されていた。何かメールするべきなのかなあと思ったけどメールはあまりしたくないのでそのままぱたんと閉じた。



何時間かした頃、滅多に鳴らないそれが軽やかなメロディを小さく奏でた。「むらかみエロすぎ」そのさかただくんのメールにどう返信するべきか悩んだけど結局「そういうの好きなんでしょ」と送った。すると「大好き」と来たから今度こそどうすればいいかわからなくなって、「そういう目で本を見るな変態」と送ってわたしは眠りについた。






「あいつこんなん平気で読んでんのかよ…鼻血出そう」






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