「総悟」
あれから二日ほど経ったとき、土方さんが煙草をくゆらせながら、ニヤ、笑みを含み、俺の隣に腰を落とす。
「この前、巡回さぼったとき、手前ぶっ倒れてたらしいな」
「土方さんに関係ないでしょ」
「それで、万事屋のチャイナ娘に介抱されてたんだってな」
「うるせえ死ね土方」
一番、土方さんに、知られたくなかった。こういう、俺の弱味を握ると、「いつもの仕返しだ」と言わんばかりに、俺をつつく。眉を寄せ、舌打ち。
「手前ら、そういう仲だったのか」
「殺されたいんですか」
「片思いか」
片思い。その言葉を脳内で繰りかえした。否、違う。恋、が当てはまる、感情ではない。この穢い感情に、名前はない。
「そんなんじゃ、ないでさ」
「まあ、自分に素直になれよ」
ポンと、肩に手を乗せ、土方さんが微笑した。さっきとはまた別の、「わかってるよ言いたくねえよな、野暮なこと訊いちまって悪かった。だけど俺はわかってるよ」というような、笑顔だった。嗚呼腹立つ。手前そんな経験あるのかよ姉上にちょっと恋しただけだろ、俺にもわからないのに手前にわかってたまるか!
という気持ちをこめた笑顔で、バズーカを打った。
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